今回は破天荒なWeWorkのアダム・ニューマン前CEOについて見解して行きたい!
新規株式公開(IPO)の実現を前に辞任した、WeWorkのアダム・ニューマン前CEO。
世界に数百カ所あるWeWorkのある拠点で働いていた複数の従業員によると、
ニューマン氏がやって来るときに遵守せねばならない2つの絶対的ルールがあった。
1つは、1本140ドル(約1万5000円)する、ニューマン氏お気に入りの
テキーラ「ドン・フリオ1942」のショットグラスとケースを
確実に手元に取り寄せておくことだ、
とある従業員は証言する。
「そうしないと、ニューマン氏はブチ切れるんです」
そしてもう1つが、音楽。
必ずパーティ会場並みのボリュームで鳴らしておくこと。
「スタッフが集中できないほどがんがん鳴らしています。何もできやしません。
契約しているコワーキングの利用者からも音量が大きすぎると苦情が出ていましたが、
もし音楽を止めれば、自分たちがニューマン氏とその取り巻きたちから
大声で罵倒されることになるので、どうしようもないんです」
WeWorkの従業員の大多数を占める若い大卒生たちが、
自分たちの入った会社が普通でないことに気づくまでさほど時間はかからなかっただろう。
ニューマンCEOの卓越した能力
スタートアップの急速な成長拡大には一種の「成長痛」が伴うもので、
WeWorkも例に漏れず、長い時間をかけて、不調や急激な変化に耐えながらやってきた。
ただ、同社が特殊なのは、
その熱狂的なエネルギーがたった1人のトップによって生み出されてきたことだ。
現在40歳のニューマン氏は、気性が荒く霊感の強いビジョナリーと見られていた。
創業当初からの古株を含め、彼のそばで働いたことのある従業員たちはみな、
**人をその気にさせ、WeWorkで働く人生がいかに素晴らしいかを
熱く語る能力は「ずば抜けていた」**と口をそろえる。
WeWorkはまるごとビルを借り上げて机を貸し出す会社じゃない、
世界を変える仕事をしているんだ——ニューマン氏はそう説明していた。
彼自身が、使命感に駆り立てられたワーカホリック(仕事中毒者)の気力と、
英雄的ペルソナを組み合わせたような、WeWorkの精神を体現する存在だったのだ。
ニューマン氏は時間を最大限につくり出すため、
プライベートジェットや運転手付きの車で会議を開いた(ときには採用面接すらも)。
誰も乗っていない運転手付きの車を随行させ、
打ち合わせが終わったら相手をその車に乗せて帰したり、
結局随行させた車を使わずに、打ち合わせ相手と商用便で一緒に帰ったりもした。
それでも、「2020年までに評価額1000億ドルで新規株式公開(IPO)」という
彼のゴールにたどり着くためには、もっと頑張らねばならなかった。
従業員たちももっとWeWorkに尽くす覚悟が必要だった。
WeWorkのニューヨーク・チェルシー地区にある本社には、
シャワー、サウナ、マッサージテーブルを完備した、
ニューマン氏のプライベート・バスルームが備えつけられていた。
月曜日にはときどき小さな会議が開かれる。
酒を大量に飲みながらやるため、深夜まで続くことも多い。
会議に呼ばれるのは6〜8人の経営幹部たち。
会議に呼ぶ、呼ばないをうまく使って権力を操るわけだ。
アシスタントたちも、会議が終わるまで部屋の外で待機していなくてはならなかった。
役員たちが資料を必要とするケースがあるからだ。
会議はときに午前3時にもおよんだ。
コワーキング利用客の目があるため、
アシスタントたちはホテルの部屋などで身を潜めて待つこともあったという。
ニューマン氏はたくさんのスタッフにサポートされている様子を見られるのが嫌いだったようだ。
電話を真っ白に塗り替えさせるCEOの妻の美学
経営幹部たちはリソースの無駄遣いだからと言って
アシスタントたちを残して海外出張に出て行きながら、
いざ現地に着いてアシスタントが必要になると、
残してきたアシスタントをわざわざ飛行機で呼び寄せ、
6時間だけ手伝わせ、また飛行機で帰すようなこともあった。
ニューマン氏の妻レベッカ氏の人使いの荒さは特にひどく、
役員室に近い部署で勤務していた元従業員は、
彼女が2年間で6人の役員秘書を取っ替え引っ替えしたと証言してくれた。
ちなみに、複数の社員の話によると、
レベッカ氏の美的感受性は絶対主義とも言えるほどで、
とりわけ白ずくめのガジェットへのこだわりは強いとか。
スタッフに白のスプレーを用意させ、
デスクの固定電話を解体させてすべて白く塗った上で、
組み立て直させたこともあるという。
あり得ないくらいに高い離職率
ニューマン氏のヴィジョンに共感したミレニアル世代の従業員たちはめちゃくちゃに働く。
情報提供に応じてくれた多くの若者たちが、人生で一番働いたと話してくれた。
詳しくは下の記事にまとめてあるのでくり返さないが、
猛烈な勢いで世界中に拠点を増やし、
共同生活サービスや学校運営など多岐にわたるグループ会社を立ち上げ、
21社もの企業を立て続けに買収した。
WeWorkの時間感覚は特殊で、従業員たちは冗談半分ながら「WeWork年」という言葉を口にした。
「WeWorkで1年働くのは、他の企業で10年働くのと一緒さ。離職率はマジで、マジで、マジであり得ないくらい高かった」
毎日新しいプロジェクトを割り当てられ、
数カ月に一度はマネージャーが変わったと、
3人の元従業員が証言してくれた。仕事量が多すぎると不平をこぼしたことが知れ、
解雇される者もいたとの話もある。
採用チームは限界までパフォーマンスを発揮し、
2017年前半に2200人ほどだった社員数は2019年までに1万人を超えた。
それでも足りないという。
ある元役員は「WeWorkがこれまで経験してきた成長を持続させるには、
不動産業界の人材だけでは足りない。
とにかく人手不足で、あらゆる部署がオーバーワーク状態だ」と語った。
同役員は、自ら辞めた人も辞めさせられた人も
「心底会社を信じることのできなかった人たちだ」と表現している。
役員ですら知らない人間が突如会議に参加
従業員からは、正体不明の人物が会議に参加するケースがしばしばあったという話が聞かれた。
ある元経営幹部は、ニューマン氏を囲むミーティングに参加した際、
知らない人物が同席していて、紹介もされないことが何度かあったと教えてくれた。
また、そうした正体不明の人物が、取引案件に関する議論で具体的な意見を口にすることもたびたびあったという。
「会議室を出て、上席の役員に『彼は誰ですか、知っておくべき人物でしょうか?』と聞くと、『いや、俺も知らないよ』と。数カ月後、その人物はあるユニットの責任者だとか何とか……別に協力することにはやぶさかではないのですが、単純に気味が悪かったです」
ニューマンCEOは会議の最中にヘブライ語に切り替えることも多く、
そうなるとヘブライ語を話せない人は議論の蚊帳の外に置かれてしまう。
上の証言をしてくれた元経営幹部は、ロゼッタストーン(世界中で提供されている語学プログラム)
のヘブライ語コースをチームで導入することも考えたよ、と笑いながら話してくれた。
他の従業員によると、実際にヘブライ語を勉強していたアシスタントもいたという。
また、ニューマン氏はしばしば、
特段の経験を持っていない自分の友人や家族たちを連れてきてはポジションにつけ、
そこでうまくいかないと別のポジションに変えるといったことをくり返した。
「マッチする仕事がなくても、新たに(無理くり)つくらされました」。
元採用チームの従業員はそう証言した。
著名アーティストのライブ中にセックス、麻薬…
イギリスの人気オルタナロックバンド、バスティル(Bastille)のダン・スミス。
これほどのビッグネームを社内イベントに登場させたWeWorkの資金力に従業員たちも驚きを隠せない。
2018年8月、あるWeWorkの社員はイギリス南東部の町タンブリッジ・ウェルズに到着し、
同僚と一緒にあるテントに腰を落ち着けた。同社の「サマーキャンプ」に参加したのだ。
2018年まで毎年行われてきた、
社員全員が参加する一種の福利厚生イベントで、旅費は会社が負担し、
集まった従業員たちはテントで寝る。テントはオプションで「ゾーン」を選ぶことができ、
音楽会場に近い「徹夜ゾーン」もあれば、
より静かで離れた場所も用意されていた宿泊設備は追加料金を自腹で支払えばアップグレードが可能で、電気を使ったり折りたたみベッドを使ったりできる。ユルト(遊牧民の使う円形テント)のなかのベッドに寝るため、1800ドル(約19万5000円)を払った者もいたという。
会場では、ヨガや瞑想、ロッククライミング、陶器づくり体験、アーチェリー、空中ブランコ、カクテルづくり、ウィスキー試飲……といったプログラムの合間に、ニューマン氏や代替医療で知られる作家のディーパック・チョプラ氏による啓発めいたトークが行われた。
夕方には、ロード、バスティル、クリスタル・ファイターといった著名アーティストによるライブが行われ、取材に応じてくれた従業員たちはみな、このイベントにいったいどれだけ金をつぎ込んだのかと驚いた、と感想を語った。
上の2018年8月を含めキャンプに二度参加した別の従業員は「なんてこった(Oh my god!)キャンプだよ、あれは」と表現した。
「バスティルのライブの最中に、草むらでセックスしてるヤツら、薬物を使ってるヤツら、人混みのど真ん中でコカインを(鼻から吸い込むために)線状にしてるヤツら……。朝から晩までテントのなかでセックスしてるヤツらの声も聞こえる。飲み過ぎでトイレまでたどりつけないから、思い思いの場所で放尿し、テントとテントの間でパンツを下ろして糞を垂れてるヤツもいた」
酒だけでなく、マリファナもそこらじゅうに散乱していたという。
「パーティー文化」を従業員たちはどう見るか
ある従業員はサマーキャンプについて、こう語る。
「コミュニティづくりが目的なのかもしれないけど、いくらなんでもあれはやり過ぎ。僕は去年も参加したけど、何でこんなのに参加しなくちゃいけないんだ?という感じの人もたくさんいた。僕は好きだけど、参加を無理強いする必要はないと思ってる」
サマーキャンプは従業員が全員参加する行事の1つで、ほかにもビジネス寄りの「サミット」と呼ばれるイベントがある。日中はWeWorkの経営幹部やビジネスリーダーによる講演に耳を傾け、夜はまたしてもパーティーだ。
ほとんどの従業員は、パーティー文化は素晴らしいじゃないか、と思ってWeWorkに入ってくる。けれども、数カ月、数年と働き続けるうちに、毎日10数時間働きまくっている自分にふと気づき、なかには夢から覚める者も出てくる。
コメント